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ねぎとろ丼

ねぎとろ丼

お前も仲間にしてやろうか!

   『お前も仲間にしてやろうか!』

 最近そこら中で神霊を見かけるようになった。
 異変の臭いがするなということで思い立った私、霧雨魔理沙は異変の調査をしようと決め込んだ。
 幽々子からもらったアドバイスからすると、寺の中にある墓地が怪しいらしいぜ。
 というわけで早速墓地へ入ってみると、どうも辛気臭いな。ここも妖怪の臭いがするぜ。
「それ以上近づくなー!」
「遠くから倒してやるぜ」
 早速出やがったな。私の腕前の見せ所だ。
 今回の敵は帽子を被り、御札を貼っている。
 さっきから手をブンブン振る回しているが、その手が墓石に当たると墓石は粉砕されていた。
 あの手で殴られると命はないかもしれないな。でもこういう危険が孕んでいる方がわくわくしてくるってもんだ。
「そこをどいてもらうぜ!」
 いつものように八卦炉を構える。何か腐った臭いがしやがるな。キョンシーなんてえんがちょだぜ。
 でもこいつで薙ぎ払えば一発だ。吹き飛ばせば臭いも気にならなくなるしな。
 発火、放射。魔砲でアンデッドな妖怪はお仕舞だな。

 おかしい。奴が立ち上がった。火力が足りない? そんなはずがない!
 燃料をケチっちまったか? 残りの魔力を全て叩き込んでやろうか!
 二発目。今度こそ終わったな。熱の残った八卦炉に息を吹きかけつつ、先へ進むことにした。

 お? 前に進めないぞ?
 直後、脚に激痛が走った。右のふくらはぎが痛い。もう今すぐ泣き叫びたいぐらい痛い。
 じたばた暴れようと思っても足が地面から離れない。足元を見ると私の足を腐った手が握っていた。
 骨の見える、肉が腐り落ちたような手がすさまじい怪力で私の足首を握り締めている。
 何かが持ち上がった。それは奴の頭だった。
「捕まえたぁ♪」
「……あ」
 我武者羅に足を引っ張った。振り回そうとした。それでも奴の手から逃れることが出来なかった。
「うわああああああああ!」
 もう片方の足で何度も奴の手を踏んづけるが、力を緩めてくれる気配がしない。
 右足は痺れきって、感覚がない。視界が涙でぐちゃぐちゃになってきた。このままだと私こいつに食べらちまう!
「キョンシーの怪力、舐めないでよ」
 奴が大きな口を開けて、私の足に齧り付こうとしている!
 何かないのか! そうだ、八卦炉だ! 至近距離から打ち込んじまえば良いだけじゃないか!
「あ~ん……」
 馬鹿な奴だな、今私に倒されるっていうのに。呑気にやってしていやがるぜ。
 ポロッ。おろおろ? 八卦炉が手から滑り落ちた。地面を転がり、数メートル先で止まる。
 奴の口はもうすぐそこにまで迫っていた。
 冗談じゃないぞ! こんなときに限って八卦炉を落とすなんて、勘弁してくれよ!
「お母さああああああああああん!」
「いただきまぁす」
 痛い。血が出てる。ふくらはぎの形が変わってる。凹んでる。肉がなくなってる。
「止めろ、止めろ止めろ……止めろよー!」
「んー、イマイチ美味しくないかなー」
 放せよ畜生! 霊夢より先に異変を解決してやろうと思ったのに、なんてザマだよ!
 このままだとこいつに殺されちまう! そんなの嫌だ!  絶対嫌だ!
「大丈夫、あんたは私の仲間になるだけだから。嬉しいでしょ?」
 ふざけるなよ、お前なんか無茶苦茶強い巫女にぶっ飛ばされるんだ。いい気にしていられるのも今のうちだからな。
 だからもう止めてくれよ。私を食べるのは止めてくれよ。もう手を放してくれよ。
「大丈夫、全部食べちゃったらこっちが困るから」
 何かおかしいな。こいつの言葉がすごく心地の良いものに感じてきたぞ。
 それに痛みを感じなくなってきた。
「うふふ、もう始まった?」
 私の体、一体どうなっているんだ?
「おめでとう! 魔法使いのキョンシーの誕生よ! ハッピーバースデイ!」
 おかしいな。体がかたいぞ。それに言うことを利かない。思うように動かせない。
「これからは私と一緒にキョンシーとして生きていこうね!」
 もう何か考えるのも面倒臭くなってきた。もう私はこいつに一生ついていくことにしよう。
 足の痛みも無くなったし、たぶん私は正常さ。

あとがき

魔理沙だと気付かず、キョンシー魔理沙に容赦しない霊夢、早苗、妖夢。
キョンシー化してしまうのは一時的らしいので、意識が戻ったとき隙を突いて逃げ帰りました。


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